山本牧場の森羅万象

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2013年 6月 19日 (水)

一つの時代が終了したと感じた日


先日10日、山本牧場創業時メンバー(牛)の最後の生き残りである15番が亡くなりました。研修を終えて養老牛に入植した2002年他の牧場産の牛を40頭揃えました。ここまで、ひたすら試行錯誤で走り続けた12年でしたから、牛たちもたいへんだっただろうなと思いますが...
特に最初の年は、ほかの牧場で過保護気味で飼われた牛たちが、突如自然主義的志向の牧場の厳しい環境下(特に冬!)におかれ、4頭の牛を亡くし、10頭の牛の乳頭が凍傷にやられました。どうにかこの冬を乗り越え元気を取り戻した牛たちですが、毎年配合飼料の量を減らされ、飼い方も微妙に変えられる中で、本当に苦労をかけたと思います。たぶんその年の気候の変化を含めこれだけ環境の激変を経験してきた牛たちは、日本広しといえどもいないはずです。
そういった意味で感謝しても感謝しきれない15番が分娩後少しずつ弱っていくのは、見ていても辛かったです。今回の分娩が終わったら種付けもしないで隠居させようと思っていましたので、どうにか乗り越えてほしかったのですが、分娩の後遺症で4本の脚にしびれが出て、立てなくなってしまったのです。獣医さんも回復不能と判断する中、普通は廃用でへい獣処理場に運ぶのですが、牧場で死なすことを選びました。治療放棄後放牧地の木陰で草と水を与えお互いの心が通じたように感じた6日後、僕の看取る中息を引き取りました。
厳しい戦いをともにした最後の戦友の死は、僕に牛たちへの感謝の気持ちを体の奥深い内側まで刷り込みました。養老牛放牧牛乳が美味しいのは完全放牧と無配合飼育の飼養スタイルにあるのではなく、こんなに素晴らしい牛たちが生き続けてくれているからなのでしょう。
15番の産んだ子はかわいい女の子。お母さん以上に息長く育てることを牧場の天使に誓った僕でした。

★2010年7月までの日記

C O M M E N T
今の酪農の形態では、ここまで自らの命を全うする牛も数少ない事と思います。きっと15番は幸せだったことでしょう。酪農とは科学に基づく合理性と、生きる事や命と向き合う哲学との終わりの無いせめぎ合いだと思います。
MittsuNihei    [2013/6/25(火) 12:12]       
15番は最期に一筋涙をこぼしていました。僕に何かを伝えきった安堵感に満ちているようでした。たぶん幸せな最期であってくれたはずと思います。
基本的に合理主義が哲学(生き様)を超えることは無いはずですが、牛を経済動物と括って合理性をヒューマニズムに優先させるかのような大勢の酪農産業の現状には違和感と危機感を感じます。
山本牧場owner    [2013/6/25(火) 22:20]       
廃業牛として屠殺場へ送らないでくださり、本当にありがとうございました。乳牛として生まれてきた牛さんの中で、こんなに幸せな死に方をさせてくれる酪農家さんはいないのではないでしょうか?

温かい心を持って牛に接している酪農家さんがまだここに居たのですね。

読んでいて涙が止まりませんでした。
みどり    [2014/8/27(水) 08:19] [削除]


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