山本牧場の森羅万象

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2011年 4月 7日 (木)

”廃用”の牛を買う


有機酪農は効率ばかり追い求めるような経営スタイルでは成り立たない。無駄も割り切れるような気持ちの余裕が必要になってくるが、とはいえ、完全に効率を無視するわけにはいかない。僕が有機という非効率なスタイルの中で、より無駄なく経営しようとするとき、一番気にするのは、農場全体のバランスである。特に土地の持つパフォーマンスを使いきるための牛の頭数を維持することは意識するようにしている。例えば、越冬用の草が余りそうな時や放牧草がたっぷりある時、オスの分娩が多く後継牛の確保が難しい時など、時々他の農場から牛を買うことがある。
今日そんなわけで牛を買いに市場に行ってきた。僕の場合、二年に一回ほど(今年は牛と縁がなく今日で3度目の市場だったが...)買い付ける牛は所謂”廃用牛”であることが多い。”廃用牛”即ち、他の農場をお払い箱にされた牛たちのことである。

このHPにも触れているが、現在の酪農業界では、牛の平均分娩回数は2.6回ほど、即ちわずか平均寿命4〜5歳で、牛たちは事故死したり廃用処分にされているのだ。それだけ、現場の牛たちは生乳の大量生産で疲弊しきってるわけであり、”こんな飼い方がまともなわけない!”という現状に対する反骨の思いが山本牧場のスタート地点になっている。
僕があえて廃用の牛にこだわるのは開業以来の現状に対する天の邪鬼な思いがあるからであり、こいつらに山本牧場でのセカンドチャンスを与えてやりたいという気持ちがあるからだ。繁殖障害などで廃用にされた牛たちも、ほとんどの場合うちの放牧スタイルで環境を変えてやることで立派な働き手に変わってくれるのだ。できれば10歳くらいまでは生きてもらいたい。それが当たり前だと思うが、山本牧場の平均産次は4.1産。まだまだである。
そしてもう一つ廃用買いの理由を上げると、単に乳をたくさん出すというだけでない牛を見る目が鍛えられる面白みがあるからだ。何でこいつは、追い出される羽目になったのかあらゆる想像を働かせて選ばないと自分の経営に結局マイナスになってしまうのだ。

今日、あえてこのことに触れたのには、実を言うとある原因がある。
市場で牛を選んでるときに、全く知らない青年から”牛乳を販売してるのだから、廃用を買うのは目立たないようにしたほうがいいよ!”と声をかけられたのだ。たしかに、廃用の牛を競り落としてテンションをあげてるのは自分くらい!(笑)。たぶんこの人は善意で”処分される牛を飼うのは放牧牛乳のイメージを悪くするのでは...”ということを伝えたかったのだと思うが、当然乳質は吟味し、質のいい牛を選んでることと、勇気のある忠告に対する感謝の気持ちを伝えた。
僕も牛選びに集中してたので、その場はそれで終わったのだが、後味の悪さのようなものを市場を後にしてから沸々と感じ始めた。それは日頃より感じる、業界の常識と僕の中の常識の修正しようのないずれが原因だと思う。
牛の命を全うさせてやることもできない業界の現状に問題の本質があるにもかかわらず、そこに目がいかずに廃用=悪の図式だけが独り歩きしている青年の意識が実を言うと、業界全体の意識なんだろうなと思えてなんだか背筋の凍る思いがした。
”廃用”は、実際もっと我慢して飼えるはずなのに我慢しきれなかった人間が勝手に牛に付けた言葉(自戒の意味も込めて...)。”廃用”でも、牛は牛なのだ。

★2010年7月までの日記


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